2023年4月21日金曜日

いま話題のステマにご用心!

 いま話題のステマにご用心!


昨今の食品をはじめとする商品の値上げラッシュ。私たちの生活はこの先どうなってしまうのか、憂いているのは私一人ではないはずです。それも上げ幅20%前後と、これまでとは比べ物にならないほどで、まさに私たちの懐は悲鳴をあげています。

この先いつまでこうした状況が続くのか、先行き不透明の現状に私たちは只々狼狽えるばかりです。それでなくても、新型コロナやウクライナとロシアによる紛争、そして世界各地で起きている自然災害など、気になることが次から次と起きていて、気の休まることがない毎日です。




そして、こうした不景気と不安定な世の中になると、目立ってくるのが詐欺まがいの行為です。善意を装い、人が人を騙す卑劣な行為、これが今のような生き苦しい不安定な状況下では増加するのですから、何とも世知辛く情けない世の中になったものです。

そんな卑劣な行為の代表格である「オレオレ詐欺」は、あの手この手と手口を変えて巧妙化し、被害は収まるどころか、被害額では増加さえしているといいます。

今回、ここで取り上げるのは、そんな「オレオレ詐欺」と同様に巧みに仕掛けられた、今話題の『ステマ』についてです。

人の心を弄び、騙す点では両者は共通していいます。


ステマとはステルスマーケティングの略です。何でもかんでも略さなくていいと思うのですがこのご時世。
それはさておき、意味としては「一見、広告であることを隠して宣伝する行為」です。

本来、ステルス(stealth)は英語で、「隠密」「こっそり行う」などの意味ですが、わたしはこの単語を初めて知ったのは、アメリカのステルス戦闘機(レーダー捕捉不能の)が話題になった時でした。

そして今、我が国で話題になっているのが、この「こっそり」の意味合いを含んだステマ(ステルスマーケティング)です。


消費者庁が先日(3月28日)発表したのが、このステマ行為に対して、景品表示法に基づく規制を10月1日から行うというものでした。


ここまでの説明では漠然としていてよく分からないという方に、具体例をあげてお話ししたいと思います。

例えば、最近の新聞(私の場合、朝日新聞)では一面まるまる広告というページが多く見受けられますが、この場合、ページの左上、乃至は右上に「全面広告」と必ず表記されているはずです。

左上に「全面広告」と表記されている


ですから、わたしたちはその記事を広告という前提で読みますから、このケースでは齟齬や誤解は生じません。

これが本来のルールです。


しかしながら、仮に、この表記がないとすると、人によっては新聞記事と誤解して、その製品(あるいはサービスなど)を広告以上に過大評価してしまうという懸念が生ずる訳です。

これがステマを仕掛ける側の意図するところです。

ですから、「全面広告」がない場合はステマと判断され規制違反でアウトになる訳です。


こんなのもステマでは? 消費者庁へ提言

わたしたちは兎角、テレビのコマーシャルなどを何気なく見ていても、それが宣伝と認識していれば「宣伝だからオーバーに言っているな」と、ある程度その物の評価を下方修正して受けとめることができます。

ですから、その商品を買うか買わないかの判断が的確にできる訳です。

ところがステマの場合、消費者が誤解するように意図的に仕組んでいますから、巧妙な詐欺と同じように騙されるケースが多くなる訳です。

仕掛ける側の言い分は「消費者が勝手に誤解したのだから」で、自分達を正当化しようとします。

従来、この辺りの解釈が消費者と仕掛ける側で食い違いがありトラブルにつながっているようです。

そこで、こうしたトラブルを未然に防ぐために法制化され整理されたのが、今回のステマ行為に対する景品表示法に基づく規制です。


ところが、このステマ問題、今年の10月以降規制が行われるとはいえ、ステマ行為かどうかを決定づけるには上記のような問題や様々な解釈があり、一筋縄ではいかないのが現状です。

例えば、皆さんも利用しているネットショッピングサイトなどで商品の感想を述べた「レビュー」です。
購入者が純粋に優れた商品と感じ好意的な評価(☆☆☆☆☆)として投稿されたレビューの場合は問題はありませんが、レビューを書くことで販売者側から購入者に何らかの対価があった場合などは判断が分かれるところで、微妙なケースが多々あるようです。




消費者庁はその点に関し、様々なケースを想定して現在も検討しているようですが、今回わたしがここで取り上げる事例は、ステマの規制に関する新聞記事等を読む限りでは、消費者庁が想定する事例に入っていないために、私としてはここで問題提起しておきたいと思った訳です。


その事例とは

かつて某テレビ局の生活情報番組「ためして**テン」で取り上げられた商品が、放送翌日には完売になるという社会現象が話題になりました。いわゆる、それほどの影響力がテレビにはあるとの噂がありました。

これは筆者も実際に何度か経験したことで、これは噂の範疇ではなく真実そのものでした。

かつて、「バナナが健康に良い」とある番組で放送されると、翌日スーパーのバナナ売り場はカラッポ状態とか、ラーメンの美味しい店が紹介されれば、同じく翌日からのそのラーメン店が長蛇の列などの現象が数えきれないほどあった訳ですが、その傾向はいまだに衰えていないようです。


こうした人間の心理をついたテレビ番組があの手この手と趣向を変えて、現在も放送され続けています。

そうした中で、わたしが「巧みだなー」と呆れてしまうのが、巨大ディスカウントストアーで展開される娯楽番組です。某有名タレントが常連客としてそのストアーを訪れ、日頃のショッピング光景を視聴者に公開するという類の番組です。




お気に入りのタレントさんが推奨する商品なら、自分も一度は買ってみようと思うのが人の常。そんな人間の弱みを巧みに利用した番組(商法)があるのです。
タレントさんが薦める商品の宣伝と巨大ディスカウントストアー自体の宣伝という具合に、番組内で長時間に渡り、しっかりと宣伝されているのです。
冷静に考えれば番組全体がコマーシャルと気付く筈なのですが・・・

そうかと思えば、同系の番組として、お笑いタレントなどがファミレスやフード・チェーン店の人気メニューを当てる番組や、そうしたお手頃店のメニューをミシュラン**星の一流シェフやカリスマ店主がメニュー評価する番組などもあります。

こうした番組は一見すると、金額あて、順位あてのクイズ番組形式になっているため、好奇の目で見入ってしまう訳ですが、冷静に考えると番組全般でその店のメニューを事細かに紹介し、出演者がヨイショしまくる「やらせ的」な要素が強いことがわかります。

それによって店のイメージは自ずとアップし、番組を見終わる頃には、視聴者は見事に洗脳状態になっているのです。




「一流シェフが太鼓判を押しているのだから間違いない、明日あの店の一番人気メニューを食べに行こう」といった人も視聴者の中にはいるのかもしれません。

あからさまに「この製品は良いです、安いです」といったコマーシャルよりも、この手の番組の効果、影響力は絶大で惑わされていることを私たち消費者は認識すべきだと思います。

以上が消費者庁のテーブルに乗っかっていないと思われる、ステマ規制に関する問題提起の事例であり、検討項目に是非とも入れていただきたい課題です。

実は、この手の番組は民放各社が視聴率が取れるからと、あの手この手と人を変え、店を変えて繰り返し制作され放送されてきています。
放送局もこの手の番組には「視聴率稼ぎ」の他に、思わぬ副産物(宣伝)が隠れていたことに気づいたのかどうかは「タマゴが先か、ニワトリが先か」同様わかりませんが、ドル箱番組であることだけは確かなようです。

そして、こうした番組は極めて巧妙に死角化されていて生活情報番組のように思えるため、消費者庁からはノーマークになっているのが現状と推察します。

是非とも、10月までの間にこうした手の込んだ番組の存在を確認いただき、規制対象の叩き台としていただくよう要望します。

最後までお読みいただきありがとうございました。


JDA 2023.04.21